サムライアリの奴隷狩り

サムライアリ

サムライアリ

アリ科・ヤマアリ亜科

体長:7mm

分布: 北海道・本州・四国・九州

サムライアリは他のアリを奴隷にして働かせる習性があります。 奴隷を使うのは人間の世界だけではありません。 奴隷される多くはクロヤマアリで、サムライアリと似ていて日本のどこにでもいます。

サムライアリは暑い夏の午後、数百から数千匹の大行列を組んで クロヤマアリの巣に向かい奴隷狩りをします。 巣に到着すると鋭い大あごでクロヤマアリを突き刺して殺し幼虫やさなぎを略奪します。

クロヤマアリ

クロヤマアリ

アリ科・ヤマアリ亜科

体長:5mm前後

分布: 北海道・本州・四国・九州・沖縄

今井弘民、久保田政雄[著作権者名]
(アリ類データベース)より引用。

捕まえたさなぎや幼虫は殺さず自分の巣に持ち帰り、育てて自分たちの奴隷として働かせます。

幼虫やさなぎを育てるのはサムライアリでなく、 以前同じようにつれてきたクロヤマアリである。

子育て以外でも、エサとり、巣の掃除、また女王アリの世話など何でも奴隷にしてもらいます。

さらに情けないことに自分ではエサを食べることができず、奴隷に口移しで 食べさせてもらいます。いつからこんな風になってしまったのか、自分では子育てや身の回りのことは何もできず、奴隷がいなければ生きていけないように進化したのであります。

なぜ奴隷として働くのか?
アリの体表は炭化水素というワックス成分におおわれていますが、ワックス成分の組成は種類やコロニーごとに違います。 アリは相手の体表を触角で触れながらワックス成分を確認して自分の仲間か敵か見わけているので、他種でもワックス成分が同じなら同じ仲間と思ってしまう。 その習性をサムライアリは利用していて、自分のワックス生産を抑えクロヤマアリの体表のワックスをいただいて自分の身にまとい同じワックス成分にしている。 それによってクロヤマアリは自分の仲間と思い込んで奴隷だと自覚がないまま世話をしているようなのです。
一人で巣をのっとる
アリの世界では、古い巣で育った若い女王アリは巣立ちを終えると、自分一人で新しい巣を築いていかなくてはなりません。 自分で巣を作り卵を産み、生まれてきた子供を育て働きアリを増やしていきます。 しかしサムライアリの女王アリは卵を産むこと以外奴隷なしでは子育ても巣を作ることもできません。 ではどうやって巣を築いていくのかというと一人で他のアリの巣に侵入し、巣を乗っ取るのである。侵入する巣の多くがクロヤマアリの巣である。 クロヤマアリの巣に侵入したサムライアリの女王アリは当然抵抗にあうが、そんなのおかまいなしに突進し、クロヤマアリの女王を見つけると鋭いあごで殺してしまう。 そうすると巣の中では劇的な変化が起こり、いままで抵抗していたクロヤマアリがおとなしくなり、サムライアリの女王を受け入れてグルーミング(みづくろい)を始めるのである。 サムライアリの女王はクロヤマアリの女王の体表のワックス成分をなめとって自分の身にまとうことで、クロヤマアリに自分たちの女王だと認識させているのです。 乗っ取ることに成功したサムライアリの女王はあとは卵を産めばいいだけ、子育てからエサとりなど、なにもかも奴隷のクロヤマアリがしてくれます。 そしてやがて巣の中はサムライアリでいっぱいになります。 逆にクロヤマアリは死んでいくので、クロヤマアリを補充するためサムライアリはまた奴隷狩りにでかけます。

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